セキュリティエンジニアとは?仕事内容や年収、必要とされるスキルを解説

個人情報の流出やランサムウェア被害の増加、サイバー攻撃の巧妙化やデジタル化の進展により、企業や個人を守るセキュリティエンジニアの重要性が高まっています。

セキュリティエンジニアは、脆弱性診断やインシデント対応を通じてシステムを安全に保ち、企業のITインフラや社会全体を支えています。

この記事では、仕事内容や求められるスキル、年収の相場、将来性について詳しく解説します。

この記事のポイントまとめ

セキュリティエンジニアとは?

セキュリティエンジニアとは、サイバー攻撃や不正アクセスからシステムやネットワークを守る専門家のことを指します。

企業や組織のIT環境を安全に保ち、情報漏えいやデータ改ざんといった脅威から重要な資産を守る役割を担います。

IT技術の進化に伴い、サイバー攻撃の手法も高度化しており、企業は常に新しい脅威にさらされています。

そのため、セキュリティエンジニアの存在は、もはやIT業界だけでなく、あらゆる業界で不可欠となっています。

企業におけるセキュリティエンジニアの役割

セキュリティエンジニアの業務範囲は広く、以下のような役割を担います。

  • システムやネットワークの防御
    不正アクセスやマルウェア攻撃を防ぐために、ファイアウォールや侵入検知システム(IDS/IPS)の設計・運用を行います。
  • 脆弱性の診断と対策
    システムのセキュリティホールを特定し、必要な修正やパッチ適用を実施します。
  • インシデント対応
    サイバー攻撃が発生した際に迅速に対応し、被害を最小限に抑えるための調査・対策を行います。
  • セキュリティポリシーの策定
    企業全体のセキュリティ対策を強化するためのルール作りや、従業員向けのセキュリティ教育を実施します。
  • 最新の脅威情報の収集
    日々進化するサイバー攻撃に対応するため、最新のセキュリティ動向を調査・分析し、企業の防御策に反映させます。

このように、セキュリティエンジニアは単なる技術職ではなく、企業のリスク管理や戦略的なIT運用にも深く関わる重要な職種です。

次の章では、具体的な仕事内容について詳しく解説していきます。

セキュリティエンジニアの仕事内容

セキュリティエンジニアが担当する、以下5つの仕事について解説します。

  • 脆弱性診断(セキュリティリスクの特定)
  • セキュリティポリシーの策定・運用
  • インシデント対応(サイバー攻撃への対策)
  • システムやネットワークの監視・防御
  • 最新のサイバー脅威への対応

セキュリティエンジニアの業務は多岐にわたり、企業の規模や業界によって求められる役割にも違いは出てきます。

脆弱性診断(セキュリティリスクの特定)

システムやネットワークに潜むセキュリティホール(脆弱性)を発見し、攻撃者に悪用される前に対策を施します。

  • ペネトレーションテスト(疑似攻撃による耐性チェック)
  • 脆弱性報告と修正対応のアドバイス
  • Webアプリケーションや社内ネットワークの脆弱性スキャン

セキュリティポリシーの策定・運用

企業全体の情報セキュリティ方針を定め、安全なIT環境を構築するためのルール作りを行います。

  • 社内のセキュリティガイドラインの作成
  • 従業員向けのセキュリティ教育・研修の実施
  • アクセス権限の管理・制御

インシデント対応(サイバー攻撃への対策)

サイバー攻撃や情報漏えいなどのセキュリティインシデントが発生した際、迅速に対応し被害を最小限に抑える業務です。

  • 侵入の検知と影響範囲の特定
  • 不正アクセスやマルウェア感染の原因分析
  • インシデント対応マニュアルの策定

④ システムやネットワークの監視・防御

日常的にネットワークやシステムの監視を行い、不審な動きを検知・対応します。

  • IDS/IPS(侵入検知・防御システム)の導入・運用
  • セキュリティログの監視と分析
  • ファイアウォール・アンチウイルスソフトの管理

⑤ 最新のサイバー脅威への対応

セキュリティの世界は日々進化しており、新しい攻撃手法に対応するための情報収集が欠かせません。

  • 最新の脆弱性情報や攻撃手法の調査
  • セキュリティツールや技術のアップデート
  • 業界のセキュリティカンファレンスや勉強会への参加

これらの業務を通じて、セキュリティエンジニアは企業のITインフラを守り、ビジネスの継続性を支えています。

次の章では、セキュリティエンジニアに求められるスキルについて詳しく解説します。

セキュリティエンジニアに必要なスキル

セキュリティエンジニアに求められる、以下6つのスキルについて解説します。

  • 基本的なITスキル
  • セキュリティ関連の専門知識
  • プログラミング・スクリプトスキル
  • ログ分析・インシデント対応能力
  • コミュニケーション能力
  • 継続的な学習意欲

セキュリティエンジニアとして活躍するためには、技術に関する幅広い知識とスキルに加えて、問題解決力やコミュニケーション能力も重要です。

基本的なITスキル

セキュリティ対策を実施するには、ITインフラやシステムの基本を理解している必要があります。

  • ネットワークの知識
    TCP/IP、ルーティング、VPN、ファイアウォールなど
  • OSの知識
    Windows、Linux、macOSの基本操作や設定
  • クラウドの知識
    AWS、Azure、GCPのセキュリティ設定

セキュリティ関連の専門知識

サイバー攻撃の手法や対策について深く理解することが重要です。

  • 暗号技術
    SSL/TLS、AES、RSAなどの暗号化技術
  • 認証・アクセス管理
    多要素認証、IAM、シングルサインオンなど
  • 脆弱性診断・ペネトレーションテスト
    Metasploit、Burp Suiteなどのツールの活用
  • セキュリティフレームワーク
    NIST、CIS、ISO 27001 などの標準規格

プログラミング・スクリプトスキル

セキュリティエンジニアには、コードの解析や簡単なツールの開発が求められることがあります。

  • Python, Bash, PowerShell
    セキュリティツールの開発やログ解析に使用
  • SQL
    データベースのセキュリティ診断やログ分析
  • JavaScript・Web技術
    XSS、SQLインジェクションなどの脆弱性調査

ログ分析・インシデント対応能力

サイバー攻撃の兆候を発見し、迅速に対処する能力が求められます。

  • SIEMツールの活用
    Splunk、ELKなど
  • ログ解析とアラート対応
    サーバー、ネットワーク機器、アプリケーションログの分析
  • フォレンジック調査
    攻撃の痕跡を特定し、証拠を収集

コミュニケーション能力

セキュリティ対策は企業全体で取り組む必要があるため、他の部署や経営層との調整が不可欠です。

  • 分かりやすい報告・説明
    専門用語を使わずにリスクを伝える力
  • 教育・トレーニングスキル
    従業員向けのセキュリティ研修の実施
  • チームでの協力
    インシデント発生時の迅速な連携

継続的な学習意欲

サイバーセキュリティは日々進化する分野であるため、常に最新情報をキャッチアップする姿勢が求められます。

  • セキュリティニュース・ブログのチェック
    脆弱性情報、最新の攻撃手法
  • セキュリティ関連の資格取得
    CISSP、CEH、CompTIA Security+ など
  • カンファレンスや勉強会への参加
    Black Hat、DEF CON、CODE BLUE など

これらのスキルを身につけることで、セキュリティエンジニアとしての市場価値を高め、企業や社会に貢献できるようになります。

次の章では、セキュリティエンジニアの年収について詳しく見ていきます。

セキュリティエンジニアの年収

セキュリティエンジニアの年収に関して、以下4つについて詳しく解説します。

  • セキュリティエンジニアの平均年収
  • 企業規模や業界による年収の違い
  • 年収アップのために重要な要素
  • 海外のセキュリティエンジニアの年収

セキュリティエンジニアは、IT業界の中でも特に需要が高まっている職種の一つということもあり、他のエンジニア職と比較しても年収は高めの傾向があります。

セキュリティエンジニアの平均年収

セキュリティエンジニアの年収は、企業の規模や職種によって異なりますが、国内の平均年収は以下のような相場となっています。

新卒や未経験からのスタートでは年収400万円前後が一般的ですが、数年の経験を積むことで600万円以上を狙うことができます。

さらに、高度なスキルを持つエンジニアやマネジメント職に就くと、1,000万円以上の年収も可能です。

企業規模や業界による年収の違い

セキュリティエンジニアの年収は、企業の規模や所属する業界によっても変わります。

  • 大手IT企業や外資系企業
    年収800万〜1,500万円以上のケースも多く、高待遇
  • 金融・通信業界
    サイバー攻撃のリスクが高いため、セキュリティ強化に積極的で高収入の傾向
  • ベンチャー企業・スタートアップ
    給与は企業によるが、ストックオプションなどのインセンティブがある場合も
  • 公務員・官公庁系
    年収は500万〜800万円ほどで、安定した待遇

年収アップのために重要な要素

セキュリティエンジニアとして年収を上げるためには、以下の要素が重要になります。

  • 高度な専門スキルの習得
    ペネトレーションテスト、フォレンジック調査、クラウドセキュリティなど
  • 資格取得
    CISSP、CEH、OSCP などの認定資格を取得すると評価が上がる
  • 英語力
    外資系企業やグローバル案件に関わることで、より高収入の機会が増える
  • マネジメントスキル
    セキュリティ部門のリーダーやCISOなどに昇進すると年収アップ

海外のセキュリティエンジニアの年収

海外では、特にアメリカのセキュリティエンジニアの給与が高いことで知られています。

特にアメリカでは、シリコンバレーの企業や政府系機関でのセキュリティエンジニアの需要が非常に高く、年収2,000万円以上を稼ぐエンジニアも珍しくありません。

海外でのキャリアを視野に入れることで、より高い収入を得るチャンスがあります。


セキュリティエンジニアは、スキルや経験によって大きく年収が変わる職種で、特に専門性の高いスキルや資格を持つことで、年収アップのチャンスが広がります。

また、外資系企業や海外でのキャリアを考えることで、さらに高い収入を目指すことも可能です。

次の章では、セキュリティエンジニアになるためのキャリアパスについて詳しく解説します。

セキュリティエンジニアになるためのキャリアパス

セキュリティエンジニアになるためには、ITの基礎をしっかりと身につけた上で、セキュリティに関する専門知識やスキルを習得する必要があります。

未経験からでもキャリアを築くことは可能ですが、計画的に学習し、実務経験を積むことが重要です。

ここでは、セキュリティエンジニアになるための具体的なキャリアパスを紹介します。

① 未経験からのステップアップ

ITの基礎を学ぶ(0〜2年目)

セキュリティエンジニアになるためには、まずITの基礎を理解することが不可欠です。

主に学ぶべき分野

おすすめのキャリアスタート

ITエンジニアとしての実務経験を積むことで、システムやネットワークの仕組みを理解し、セキュリティに関する知識を深める土台を作ることができます。

セキュリティ分野の専門知識を習得(2〜5年目)

ITの基礎を身につけたら、セキュリティの専門分野へ進みます。

主に学ぶべきスキル

おすすめのキャリア

この段階では、実際のセキュリティ業務に携わりながら、専門性を深めていきます。

高度なスキルを習得し、キャリアアップ(5年目以降)

経験を積んだ後は、さらに高度な分野に進むことができます。

主に学ぶべきスキル

おすすめのキャリア

このレベルになると、年収1,000万円以上のポジションも視野に入ります。

② 役立つ資格と学習方法

資格を取得することで、スキルの証明や転職・昇進の際に有利になります。

また、以下の学習方法もおすすめです。

  • オンライン学習
    Udemy、Coursera、TryHackMe、Hack The Box
  • セキュリティカンファレンス参加
    Black Hat、DEF CON、CODE BLUE
  • オープンソースツールを活用
    Kali Linux、Metasploit、Wireshark

セキュリティエンジニアになるには、まずITの基礎をしっかりと身につけ、その後専門分野に進むことが重要です。

キャリアパスは人それぞれですが、ネットワークやインフラエンジニアを経てセキュリティ分野に進むルートが一般的です。

さらに、資格の取得や実践的な経験を積むことで、より高収入なポジションを目指すことができます。

次の章では、セキュリティエンジニアの将来性について詳しく解説します。

セキュリティエンジニアの未来と展望

現代社会において、サイバーセキュリティの重要性はますます高まっています。

テクノロジーの進化に伴い、新たな脅威が次々と登場し、それに対応するためのセキュリティエンジニアの需要も急増しています。

この章では、セキュリティエンジニアの未来と今後の展望について解説します。

① セキュリティエンジニアの需要は今後も増加

サイバー攻撃の手口は年々巧妙化しており、それに対応するためのセキュリティ人材の需要は世界的に高まっています。

需要が増加する主な要因

  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速
    企業がクラウドやAIを活用することで、新たなセキュリティリスクが発生
  • リモートワークの普及
    VPNやゼロトラストモデルなどのセキュリティ対策が必須
  • サイバー攻撃の高度化
    ランサムウェア攻撃、国家によるサイバー戦争、サプライチェーン攻撃の増加
  • 法規制の強化
    GDPR(EU一般データ保護規則)や日本の改正個人情報保護法により、企業のセキュリティ対策が必須に

特に、クラウドセキュリティやOT(Operational Technology)セキュリティの分野では、専門知識を持つエンジニアの不足が顕著です。

② 今後注目されるセキュリティ分野

今後、セキュリティエンジニアに求められるスキルや分野も変化していきます。

以下の分野は特に注目されています。

クラウドセキュリティ

企業のクラウド移行が進む中で、AWSやAzure、GCPのセキュリティ対策が重要になっています。

クラウド環境特有のセキュリティ課題(設定ミス、アクセス制御、データ暗号化など)に対応できるエンジニアの需要が増加中です。

ゼロトラストセキュリティ

従来の「境界型防御モデル」では不十分になり、「ゼロトラストモデル」が主流になりつつあります。

これに伴い、IAM(Identity and Access Management)やエンドポイントセキュリティの知識が求められています。

AIとセキュリティの融合

AIを活用したサイバー攻撃が増加しているため、AIを活用した脅威検知技術も進化しています。

機械学習を用いた不正アクセス検知や、AIによる脆弱性診断の技術を持つエンジニアは、今後さらに重宝されるでしょう。

OT/ICSセキュリティ(産業制御システムの保護)

工場や発電所、交通システムなど、社会インフラを狙ったサイバー攻撃が増えています。

OT(Operational Technology)やICS(Industrial Control System)のセキュリティ専門家は、今後需要が拡大する見込みです。

ブロックチェーンとセキュリティ

ブロックチェーン技術は暗号資産(仮想通貨)だけでなく、デジタルアイデンティティ管理やセキュアなデータ共有にも応用されています。

この分野のセキュリティを理解するエンジニアも求められています。

③ セキュリティエンジニアのキャリアの可能性

セキュリティエンジニアは、専門性を高めることでさまざまなキャリアパスを選択できます。

セキュリティエンジニアとしての専門性を磨くことで、高収入のポジションに就くことも可能です。

また、国際的なキャリアを目指すことで、海外企業での活躍も期待できます。


セキュリティエンジニアは、IT業界の中でも特に将来性のある職種です。

クラウド、AI、ゼロトラスト、OTセキュリティなどの分野が発展する中で、セキュリティ対策の専門知識を持つ人材はますます求められています。

今後、セキュリティの重要性はさらに増していくため、スキルを磨き続けることで、安定したキャリアを築くことができるでしょう。

まとめ

セキュリティエンジニアを目指すなら、まずは基礎を固め、実務経験を積み、専門分野を深めることが重要です。

セキュリティエンジニアは、サイバー攻撃の増加やデジタル化の進展に伴い、ますます重要視されている職種です。

企業や組織の情報を守るために、脆弱性診断やインシデント対応、ネットワークやクラウドのセキュリティ対策など、幅広い業務を担います。

本記事では、セキュリティエンジニアの仕事内容や必要なスキル、年収、キャリアパス、そして今後の展望について解説しました。

セキュリティエンジニアとして活躍するために大切なポイントは以下のとおりです。

  1. ITの基礎知識を習得する
    ネットワーク、OS、プログラミングなど
  2. セキュリティの専門知識を深める
    ペネトレーションテスト、フォレンジック分析など
  3. 関連資格を取得する
    CISSP、CEH、OSCPなど
  4. 実務経験を積みながら、キャリアアップを目指す
    SOCアナリストからセキュリティアーキテクトやCISOへ
  5. 最新のサイバー攻撃やセキュリティ技術のトレンドを学び続ける

セキュリティエンジニアは、技術の進化に伴って求められるスキルも変化し続けるため、常に学習を続けることが不可欠です。

しかし、その分やりがいも大きく、専門性を高めることで高収入やグローバルなキャリアのチャンスも広がります。

これからセキュリティエンジニアを目指す方は、まずはITの基礎を固め、段階的にスキルアップを目指しましょう。

セキュリティ業界の未来は明るく、今から学び始めることで、大きなチャンスを掴むことができます。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!